April 12, 2005

チェコスロヴァキアの宇宙飛行士「ユーリズ・ナイト」

今日は「ユーリズ・ナイト」,人類が初めて宇宙へ行った記念日.世界中でイヴェントが開催されている.そこで今日はチェコスロヴァキアに関する宇宙飛行士を2名紹介する.

レメク宇宙飛行士
サーナン宇宙飛行士ソ連とアメリカ以外の初めての宇宙飛行士となったチェコの宇宙飛行士ヴラディミール・レメク(Vladimir Remek,1948年生,当時29歳)は,冷戦時代の1978年3月2−10日に,ソ連の宇宙船・ソユーズ28号に搭乗.サリュート6号とドッキングして移乗などを行った.

サターンV夜間打ち上げ一方,チェコスロヴァキア人を祖父母に持つアメリカの宇宙飛行士ユージン・サーナン(Eugene A. Cernan,1934年シカゴ生まれ)は,1966年ジェミニIXミッションで宇宙飛行を行い,アメリカ人で二人目となる宇宙遊泳を行った.1969年5月に打ち上げられたアポロ10号は,月周回軌道上で司令船(CM;Command Module),機械船(SM;Service Module),月着陸船(LM;Lunar Module)を有人で飛行させ,アポロ11号以降で予定されている有人月着陸計画の最後の検証を行うことが目的であったが,サーナンは同ミッションに月着陸船パイロットとして搭乗し,月面まで何と約15kmの距離まで近付き表面の様子を詳細に伝えた.サーナンの3度目の宇宙飛行は1972年12月のアポロ17号による6回目となる有人月面着陸であった.ユージン・サーナンは船長として搭乗し,サターンV型ロケットの初めての夜間打ち上げで月へ行った.アポロ計画は予算カットのためアポロ17号が最後のミッションとなったため,結果的に彼は月に立った最後の宇宙飛行士となったのである.アポロ計画で2回月を目指した(月周回,月着陸)宇宙飛行士は3人だけである;ジェームズ(ジム)・ラベル(8号,13号),ジョン・ヤング(10号,16号),そしてユージン・サーナン(10号,17号)である.
アポロ17月面車
オレンジ・ソイルアポロ17号ミッションでは,月面の撮像観測,測距観測,大気構造・成分観測,重力加速度測定,土壌測定(力学測定,中性子測定,電気特性測定),宇宙線観測,ダスト測定,熱伝導度観測,人工地震波観測,115kgの月岩石の採取など最も多くの観測と実験を行った有人月ミッションで,今日の月の研究成果はこれらのデータが基になっている.


【後日談1】

サーナンはチェコスロヴァキアの国旗を月面に立て,そしてその国旗を地球に持ち帰った.月に立てられた国旗は,小生が勤めるここオンドジェヨフ天文台(Ondrejov)に寄贈され飾られている(後ほど写真を撮影して紹介します).

【後日談2】

旧ソ連とアメリカ以外で初めての宇宙飛行士となったレメクと,アメリカで2人目の宇宙遊泳を行い人類で最後に月に立ったサーナンは2001年プラハで初めて顔を合わせ,サーナンの祖父の故郷へ共に向った.しかし,2001年10月28日,レメクとサーナンは,サーナンの祖父の故郷であるBernaticeへ向う空軍ヘリコプターに同乗中にプラハの南約100kmのMilevskoで墜落.150m以上の高さから墜落したが,幸運にも彼らは助かった.そして,プラハの病院に収容された12人の搭乗員のうち,サーナンは最も早く退院したそうである.さすが月に立った最後の男である.

【冷戦時代の宇宙開発】

ナチスが崩壊しドイツが連合軍の手に渡ると,ソ連とアメリカは挙ってドイツのロケット科学者を取り合って,ここに両国の宇宙開発・冷戦時代が始まったのである.

 1957年10月4日;ソ連,世界初の人工衛星「スプートニク1号」打上げ
 1958年1月31日;アメリカ,米国初の人工衛星「エクスプローラー1号」打上げ
 1961年4月12日;ソ連,ユーリ・A・ガガーリン(1934−68)はボストーク1号で人類で初めて宇宙へ行く
 1961年5月5日;アメリカ,マーキュリー3号/フリーダム7によるアメリカ初の有人宇宙飛行
 1969年7月21日;アメリカ,アポロ11号のアームストロング船長は着陸船イーグル号から出て9段のはしごをゆっくりと降り,左足の靴底を月面のレゴリスへ足跡を刻んだ.「これは一人の人間にとっては小さな1歩だが人類にとっては巨大な飛躍である.(That's one small step for a man, one giant leap for mankind.)」

旧ソ連から宇宙へ行くと「コスモノート(Cosmonaut)」になり,アメリカから宇宙へ行くと「アストロノート(Astronaut)」になる.冷戦時代,宇宙を舞台に競い合った両国の宇宙飛行士の呼び名が違うのは面白い.そして,レメクとサーナンは,社会主義国と民主主義国の狭間で揺れたチェコスロヴァキアに由来する宇宙飛行士達だったのである.

[チェコスロヴァキアに由来する宇宙飛行士,レメクとサーナン]
[アポロ17号は初めてのサターンV型ロケットの夜間打ち上げであり,そして最後の有人月探査となった]
[アポロ17号ミッションでは様々な科学計測が行われ,115kgの月の石も地球へ持ち帰った]
[爆発性の噴火によって形成されたと思われる ショーティー・クレーター(Shorty Crater)のリムで採取されたオレンジ・ソイル(orange soil).爆発性の噴火でできたもので火山ガラスや黒曜岩を含み,今から36億4000万年前に約400kmの月面下で溶解していた物質から成ると考えられている.]

andromedayaki at 15:40│Comments(0)TrackBack(0) 宇宙・天文・気象・自然科学 

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SOLA

流星-彗星-小惑星を追い求め世界を放浪する天文学者の四方山話。地球(チェコ-台湾)を拠点に宇宙・科学・文化・芸術・音楽を楽しむ旅人生ブログ。

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