July 05, 2008

Pan-STARRS パン・スターズ

1a726cdf.jpg(6/20にPS1望遠鏡を訪問)


2008年4月中旬、Pan-STARRS(PS1) サイエンス会議がドイツ・ハイデルベルグで1週間開催された。小生にとっては、Pan-STARRS初デビューである。太陽系の主要メンバーと議論を交わした。

Pan-STARRSコンソーシアムには、4ヶ國(US,UK,Germany, Taiwan)/10の大学・研究所が参加している。(残念ながら日本は参加していない。小生が台灣を選んだ大きな理由でもある)

* Institute for Astronomy, University of Hawaii
* Max Planck Institute for Extraterrestrial Physics, an Institute of the Max Planck Society
* Max Planck Institute for Astronomy, an Institute of the Max Planck Society
* Dept. of Physics and Astronomy, The Johns Hopkins University
* Harvard-Smithsonian Center for Astrophysics
* Las Cumbres Observatory Global Telescope Network
* Extragalactic Astronomy & Cosmology Research Group, Durham University
* Institute for Astronomy, University of Edinburgh
* Astrophysics Research Center, Queen‘s University Belfast
* Graduate Institute of Astronomy, National Central University

台灣に戻り、Institute for Astronomy(IfA), University of Hawaiiで共同研究を進める提案を進め、5月下旬から1ヶ月間、IfAに滞在して、ロバート・ジェディキらのグループに加わった。小惑星や彗星などの太陽系移動天体を自動検出し、更に、KD-treeアルゴリズムを応用して、7平方度の広視野領域の複数画像から移動量の違う天体のリンクを行うソフトウェアー「MOPS(Moving Object Processing System)」を使った観測シミュレーションを鋭意行っている。天体画像処理ソフト「IPP(Image Processing Pipeline)」は、IRAFに代わる次世代ソフトウェアーで、コマンドベースで位置測定、測光を行いテキストデータを自動的に構築する。IPPからのデータは、「PSPS(Published Science Processing System)」を通じてコンソーシアムの科学者に配布される。また、MOPSは、IPPからのデータを直接受け取り移動天体を検出する。現在我々は、太陽系小天体の理論モデル(Synthetic Solar System)を使った観測の"模擬"を主に行い、ソフトウェアーのアップデート、サイエンス観測の準備を行っている。

MOPSが検出データのうち、軌道が確定した小惑星・彗星の軌道情報は、ただちにハーバードスミソニアンのMPC(Minor Planet Center)に報告され公開される。ただし、カラーや時間変化などの情報は公開されない。小生は、存在が予想されているPlanet-X(第9惑星)のクローン天体を作った観測シミュレーション、流星群や隕石火球類似軌道、これらの分裂天体モデルを作ったシミュレーション、MOIDの進化、"特殊"天体が発見された場合にアラートを出す「MOPS Alert System」にも取り組んでいる。PS1では、次期小天体探査の候補天体もザクザク見つかるだろう。

CCD望遠鏡は、口径1.8m/F4(視野角3度)で小口径だが、PS1の一番の売りは、CCDカメラである。1.4ギガピクセル(14億ピクセル=600x600のセル、8x8のチップが8x8個)の世界最大のCCDである。直径56cm。フィルターも60cm角とお化けCCDである。30Hzで複数のガイド星をモニターし、OTA(Orthogonal Transfer Arrays)によって、電荷をX-Y方向へ移動させ、CCDチップ上で大気の揺らぎや機械的な振動を電気的に取り除く画期的な技術も組み込まれている。0.3 arc sec/picの分解能で、7平方度を一度に観測し、一晩で6000平方度を観測する。

PS1PS1g,r,i,z,yの5色のフィルターを使ったサーベイ観測を行う。主なサーベイ観測は、全体の56%が3πステラジアン(全天の3/4を5色)、25%がMidium Deep Survey(5色)、スイートスポットと呼ばれる夕方と明け方の公転軌道方向が5%(rバンド)、Stellar Transientが4%(iバンド)、M31銀河のマイクロレンジングが4%(5色)、キャリブレーション用が2%で、残りの6%がPI-timeである。

TTI(Transient Time Interval)は30分間。内部太陽系(ISS)天体に対しては15分間のインターバルで同じ領域を観測して移動天体を検出する。1-lunationで同じ領域を3回観測する。これは、およそ4日に1度の割合で同領域を観測することになる。この観測を2-lunation行う。半年後に同じ領域を少なくとも1バンドで観測して、移動天体を探す。

3πサーベイの限界等級(参考値)
   exp single 1 yr 3yr
r 38s 22.54 23.34 23.96

Medium Deepサーベイ
   exp single 1 yr 3yr
r 3x240s 23.75 26.29 26.89
(airmass 1.4, read noise 6e, seeing 0.78 arc FWHM)

黄道面のサーベイでは、Pan-STARRSの視野に約2000個の小惑星が検出され、日々1000個の新たな小惑星が発見される。PS1のミッション期間である、3.5年間では、直径が300m以上のNEO(近地球型小惑星)が数千個、メインベルト小惑星が5百万個、TNO(Trans Neptunian Object)が7000個、Centaurus天体が1000個ほど発見される見込みである。地球に衝突する危険性のある天体「PHO(Potentially hazardous Object)」も見つかるため、地球を防衛する目的でMPCを通じて早期警報も出す。

Pan-STARRSは、太陽系だけではなく、太陽系外惑星、ガンマ線バースト、超新星、銀河、重力レンズ、褐色矮星など、宇宙の様々な分野の研究に活かされるデータが取得される。データ量は、1年間で27TB、3.5年間で約100TBのデータが取得される。世界中の天文学者約200名が関わっているが、表向きメイントピックである太陽系は、40名(実質20名ぐらい)しか関わっていない。そのうち2名が日本人(D.K.博士と小生S.A.)である。超新星やγ線バーストなどのTransient Objectsに関わるY.U.博士を含めても、このプロジェクトに関わる日本人は3名しかいない。台灣中央大學・天文研究所ではポスドクを募集しているので、太陽系に限らず、Pan-STARRSのデータを使った天文学をやりたい人は、是非応募してくれると嬉しい。

PS1 Key Science Projects

1. Populations of objects in the Inner Solar System
2. Populations of objects in the Outer Solar System (Beyond Jupiter)
3. Low Mass Stars, Brown Dwarfs, and Young Stellar Objects
4. Search for Exo-Planets by a dedicated Stellar Transit Surveys
5. Structure of the Milky Way and the Local Group
6. A Dedicated Deep Survey of M31
7. Massive Stars and Supernovae Progenitors
8. Cosmology Investigations with Variables and Explosive Transients
9. Galaxy Properties
10. Active Galactic Nuclei and High Redshift Quasars
11. Cosmological Lensing
12. Large Scale Structure

PS1PS1
小生は、8月中旬から3ヶ月間、再びハワイへ乗り込む(送り込まれる)。

サイエンスと性能の要求が満たされて、ORR(Operational Readiness Review)が11月中にパスすると、30晴天夜の試験観測が行われ、年末か年始からいよいよ本番のサーベイ観測が開始される。

We are running out of time for detecting tremendous asteroids and comets!!
Hawaii

andromedayaki at 00:06│Comments(0)TrackBack(0)宇宙・天文・気象・自然科学 

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